瀬川―中田功戦(2006年1月20日、竜王戦6組)
これももう10年前か。
もっともポピュラーな対三間飛車の急戦
先手:瀬川晶司
後手:中田 功
(初手から)
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲4八銀 △3二飛
▲2五歩 △3三角 ▲5六歩 △4二銀 ▲6八玉 △6二玉
▲7八玉 △5四歩 ▲5八金右 △5二金左 ▲3六歩 △7二玉
▲9六歩 △9四歩 ▲4六歩 △8二玉 ▲3七桂 △2二飛
▲6八銀 △6四歩 ▲5七銀左 △7二銀
(第1図)
第1図まではオーソドックスな駒組みで、定跡本にも載っている急戦の形。以下先手が定跡通りに仕掛ける。
(第1図より)
▲5五歩 △同 歩 ▲4五歩 △4三銀 ▲4六銀 △5四銀
▲5五銀 △同 銀 ▲同 角 △4三金 ▲4四歩 (第2図)
第2図の4四歩では①8八角(7七角)②6四角③4四歩の分岐点。
(第2図より)
△同 金 ▲6四角 △3五歩 (第3図)
3図のところでも色々と変化があったと思ったが35歩を選択。(第3図より)
▲2六飛 (第4図)
ここで桂を受けた26飛は疑問だったか?次に2四歩とつくのだが、それならば最初から24歩といくのが勝ったようだ。なぜなら・・・
(第4図より)
△5二飛 ▲2四歩 △5八飛成 (第5図)
先手は遅れて24歩とついたが、後手から飛車をばっさりきられ、2筋を突破する前に飛車角を捌かれる展開となってしまった。
(第5図より)
▲同 金 △5四金 (第6図)
第6図の金よりが味が良い。このために飛車を先に切ったのだ。角取と共に角道を通す。
(第6図より)
▲3一角成 △9九角成 ▲8八銀 △6九銀 (第7図)
ここからは馬を大事にしつつ左右挟撃体制をつくっていく。
(第7図より)
▲同 玉 △8八馬 ▲2一馬 △5一香 (第8図)
この金にひもを付けた51香も味が良い。まさに「下段の香車に力あり」で5筋にスーっと通っているのが気持ち良い。
(第8図より)
▲4二飛 △6六歩 ▲同 歩 △8九馬 ▲5九玉 △6七銀
▲5七歩 △5五桂 ▲5六銀 △3八金 ▲5五銀 △同 金
▲6四桂 △6八銀打 ▲同 金 △同銀成 ▲同 玉 △6七金
まで、74手で後手勝ち(第9図=投了図)
以下挟撃体制を築き後手勝ち。
本局のポイントは26飛車を緩手とした飛車角の捌きといってよいだろう。
A級順位戦形成判断ボード
個人的主観です。
22:15 珍しく後手全勝か???
勝 優 有 互 有 優 勝
勢 勢 利 角 利 勢 勢
行方 - - - - - 〇 - 佐藤天
佐藤康 - - - - - - 〇 渡辺
屋敷 - - - - - - 〇 郷田
深浦 - - - - 〇 - - 広瀬
久保 - - - - - 〇 - 森内
21:10
勝 優 有 互 有 優 勝
勢 勢 利 角 利 勢 勢
行方 - - - - - 〇 - 佐藤天
佐藤康 - - - - - -〇- 渡辺
屋敷 - - - - - - 〇 郷田
深浦 - -〇- - - - - 広瀬
久保 - - - - 〇 - - 森内
20:30
勝 優 有 互 有 優 勝
勢 勢 利 角 利 勢 勢
行方 - - - - 〇 - - 佐藤天
佐藤康 - - - - - 〇 - 渡辺
屋敷 - - - - - 〇 - 郷田
深浦 - -〇- - - - - 広瀬
久保 - - -〇- - - - 森内
夕食休憩
勝 優 有 互 有 優 勝
勢 勢 利 角 利 勢 勢
行方 - - - 〇 - - - 佐藤天
佐藤康 - - - - 〇 - - 渡辺
屋敷 - - - - 〇 - - 郷田
深浦 - - -〇- - - - 広瀬
久保 - - - 〇 - - - 森内
午後16時
勝 優 有 互 有 優 勝
勢 勢 利 角 利 勢 勢
行方 ー ー ー ー〇ー ー ー 佐藤天
佐藤康 ー ー ー ◯ ー ー ー 渡辺
屋敷 ー ー ー ー〇ー ー ー 郷田
深浦 - - -〇- - - - 広瀬
久保 - - - 〇 - - - 森内
午前終了
流石に何れも差はみられず。
勝 優 有 互 有 優 勝
勢 勢 利 角 利 勢 勢
行方 ー ー ー ◯ ー ー ー 佐藤天
佐藤康 ー ー ー ◯ ー ー ー 渡辺
屋敷 ー ー ー ◯ ー ー ー 郷田
深浦 ー ー ー ◯ — — ー 広瀬
久保 — — ー ◯ — ー ー 森内
中田功-渡辺明戦(順位戦C級1組2005年7月12日)
もう10年以上前の棋譜だが、定跡の変遷として大事なところなのでチェックしておきたい。
(初手から)
先手:中田 功
後手:渡辺 明
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △8四歩 ▲7八飛 △8五歩
▲7七角 △6二銀 ▲6八銀 △4二玉 ▲4八玉 △3二玉
▲5六歩 △3三角 ▲5八金左 △2二玉 ▲3八銀 △1二香
▲3九玉 △1一玉 ▲4六歩 △2二銀 ▲3六歩 △5四歩
▲1六歩 △4二角 (第1図)
いきなり長い手数進めて恐縮だが、ここまでの手順はここでは重要ではない。
このころから流行だした早目に4二角と引いて堅さより、先手の動きをけん制する指し方だ。
(第1図から)
▲5七銀 △7四歩 ▲6五歩 △7三桂(第2図)
飛車先の歩交換を見せて先手に▲6五歩あるいは▲8八飛のような手を強要する。そしてさらに△7三桂で6五の両取りを見せ、▲6八飛を強要する。この指し方の出現によって先手の駒組みに制約が増えてしまった。
(第2図以下)
▲6八飛 △5三銀 ▲4五歩 △3二金 ▲4七金 △5一金
▲3七桂 △4一金 ▲1五歩(第3図)
先手は▲3九玉型のまま端に狙いをつけて中田功XPの形には組めたが、後手も3二金と3一金、4一金となっておらず、玉頭に手厚いのがぬかりない。早速後手から仕掛ける。
(第3図以下)
△8六歩 ▲同 歩 △6四歩 ▲同 歩 △同 銀(第4図)
6筋で動かれてみると既に6筋は支配され、7筋の角頭も危ない。現状は6五桂も見えている。先手としてはほぼ端一本の作戦なので端から動くが。
(第4図から)
▲1四歩 △同 歩 ▲1三歩 △同 香 ▲2五桂 △6五桂(第5図)
端にいったものはいいもののまともに両取りを食らってしまった。後の展開を見ていただくとわかるが、これによって角が転回できよくなることもあるが・・・。
(第5図より)
▲6六角 △8六飛 ▲7七桂 △5七桂不成 ▲同 角(第6図)
先ほど述べた通り、角の転回は成功し、端に狙いをつけたが、いかんせん戦力不足だ。
(第6図より)
△8九飛成 ▲2六桂 △6七歩 ▲同 飛 △5八銀 (第7図)
△6七歩からの△58銀打が激痛である。これは▲3九玉型が祟っている。
(第7図より)
▲1四桂 △同 香 ▲同 香 △1三歩 ▲6八飛 △4七銀成
▲同 銀 △2四角
まで、68手で後手勝ち(第8図=投了図)
最後は角まで活用され、以下▲2四角△同歩の局面で△5七角の狙いが残るのがあまりにも大きい。また、最初で述べた通り△3二金と上がっているのも大きなポイントで、これがなければ△2四角とぶつける筋は少々無理筋だ。本譜のように穴熊に囲い切る前に三間飛車の動きをけん制する指し方は猛威を振るい、現在でも主流の指し方だ。最近の順位戦でもコーヤンが色々と趣向を凝らしており、先手番ではわりとどうにかなっている状況のようなので後々紹介したい。
勝又清和-中田功戦(2009年1月20日、順位戦C級1組)
試しに。もう7年も前ですが順位戦の棋譜です。当時の段位が分からないのでタイトルは敬称略で失礼します。
勝又先生の先手で急戦模様に
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲4八銀 △3二飛
▲2五歩 △3三角 ▲6八玉 △6二玉 ▲7八玉 △4二銀
▲5六歩 △5四歩 ▲9六歩 △9四歩 ▲5八金右 △5二金左
▲3六歩 △7二玉 ▲6八銀 △8二玉 ▲5七銀左 △7二銀
▲4六歩 △6四歩 ▲6八金上 △7四歩 ▲3七桂 △2二飛(図1)
▲6八金△7四歩が入っているのが工夫だが、基本的な急戦の形で▲3七桂に対応して△2二飛車と回ったのが第1図。ここから基本通りの仕掛け。
(第1図から)
▲5五歩 △同 歩 ▲4五歩 △4三銀 ▲4六銀 △5四銀
▲5五銀 △同 銀 ▲同 角 △6三金(第図2)
通常なら△4三金と受けるところだが、△7四歩が入っているので△6三金とうける。
(第2図から)
▲4四歩 △4二飛
▲2四歩 △4四飛 ▲5六歩 △5七歩 ▲5九金 △5八銀
▲同金上 △同歩成 ▲同 金 △7五歩 ▲同 歩 △3五歩
▲7四銀 △5七歩 ▲5九金 △3六歩 ▲2五桂 △7七歩
▲同 玉 △4六飛(第3図)
少し長くなってしまったが、コーヤンは角が好きな駒であることが分かるように、△4四飛と飛車を犠牲に角の活用を図った。当然とってくれないのだが、7筋の先手の玉頭の弱点に手をつけてから3筋に手をつけて相手の攻めを焦らせる。そして第3図で飛び出した△4六飛車。コーヤンはやっぱりこういう手が好きだ。この角のラインを生かした4六飛車はコーヤンの急戦を見ているとしばしばみられる手で、参考にしていただきたい。
(第3図より)
▲3三桂不成△5六飛 ▲6六銀 △7六歩 ▲8六玉(第4図)
なんだかんだで均衡の取れていた局面。結果的にこの▲8六玉が敗着だったようで、上が手厚いことよりも冷静に▲8八玉としておくほうが勝ったようだ。以下
△5五飛 ▲6三銀成 △同 銀 ▲5五銀 △8八角 (第5図)
▲2二飛 △7二金
まで、74手で後手勝ち
8八角と打たれて逃げ道を絶たれては先手が厳しかった。
急戦の急所となる3筋5筋7筋を絡めた攻め方と、角のラインを意識した軽い捌きが参考になる1局でした。